大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和52年(特わ)550号 判決

被告人

国籍

韓国

住居

東京都新宿区百人町二丁目二三番三八号

会社役員

呉本甲保こと

呉甲保

一九二六年一二月二七日生

出席検察官

河内悠紀

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金三、〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間、右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、東京都台東区西浅草三丁目一番九号において「東海苑」浅草店、同都新宿区歌舞伎町六番五号において「東海苑」新宿店の各名称で飲食店を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外して仮名預金を設定する等の方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和四八年分の実際総所得金額が八〇、五六七、八一三円(別表(一)修正貨借対照表参照)あつたのにかかわらず、昭和四九年三月一五日、東京都台東区蔵前二丁目八番一二号所在の所轄浅草税務署において、同税務署長に対し、昭和四八年分の総所得金額が六、三〇〇、〇〇〇円で、これに対する所得税額が一、一八一、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額四七、三九八、九〇〇円(別表(四))税額計算書参照)と右申告税額との差額四六、二一七、八〇〇円を免れ

第二  昭和四九年分の実際総所得金額が七二、九七七、一五六円(別表(二)修正貨借対照表参照)あったのにかかわらず、昭和五〇年三月一五日、前記浅草税務署において、同税務署長に対し、昭和四九年分の総所得金額が七、〇〇〇、〇〇〇円で、これに対する所得税額が一、一二四、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額四〇、四一八、五〇〇円(別表(四)税額計算書参照)と右申告税額との差額三九、二九四、四〇〇円を免れ

第三  昭和五〇年分の実際総所得金額が九二、八八三、六九三円(別表(三)修正貨借対照表参照)あつたのにかかわらず、昭和五一年三月一五日、前記浅草税務署において、同税務署長に対し、昭和五〇年分の総所得金額が七、五〇〇、〇〇〇円で、これに対する所得税額が一、一二三、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額五四、二九四、二〇〇円(別表(四)税額計算書参照)と右申告税額との差額五三、一七〇、七〇〇円を免れたものである。

ものである。

(証拠の標目)

一、被告人の当公判廷における供述

一、同じく検察官に対する供述調書五通

一、同じく収税官吏に対する質問てん末書五通

一、被告人作成名義の上申書二通

一、高性奉、慎豊範、呉昌官の検察官に対する各供述調書

一、呉昌熙、立石博、兼原昭一、金順姫、橘信、鈴木正義、橋口義明の収税官吏に対する各質問てん末書

一、収税官吏赤羽修作成の総勘定元帳(貨借)

一、押収にかかる所得税確定申告書三葉(昭和五二年押第一五一〇号の符一乃至符三)

(法令の適用)

判示の各所為は、いずれも所得税法二三八条に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で、被告人が深く反省していること、過年分も含めてほ脱税額を修正申告によって既に完納している等の有利な情状をも考慮したうえ主文第一項の刑に処し、罰金刑の換刑処分につき同法一八条を、懲役刑の執行猶予につき同法二五条一項を適用する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 中村勲)

別表(一)

修正貸借対照表

呉甲保

昭和48年12月31日

別表(二)

修正貸借対照表

呉甲保

昭和49年12月31日

別表(三)

修正貸借対照表

呉甲保

昭和50年12月31日

別表(四)

税額計算書

呉甲保

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例